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 五輪真弓Selection (私家版アルバム)



  親しい友人からサポートをいただき、「五輪真弓」の私家版スペシャルアルバムを制作しました。
  音声は、レコード時代の曲はすべてレコードからデジタル化しています。
  制作年月:2012年4月

  

 Vol.1 少女/シンガーソングライター
 1.メドガーエバーズの子守唄
 2.青春の光と影
 3.なわとび
 4.あなたを追いかけて(Part1)
 5.あなたを追いかけて(Part2)
 6.雨
 7.少女
 8.煙草のけむり
 9.冬ざれた街
10.ミスター・クラウディ・スカイ
11.うつろな愛
12.なんて素敵な日
13.落日のテーマ
14.昨日までの思い出
15.酒酔草
16.星のきらめく夜は
17.ジャングルジム


 Vol.2 恋人よ/うしろかげ
 1.さよならだけは言わないで
 2.岐路
 3.抱きしめて
 4.約束
 5.残り火
 6.合鍵
 7.さよならの街角
 8.リバイバル
 9.ジグソーパズル
10.ジェラシー
11.夜汽車
12.運命
13.問わず煙草
14.時計
15.密会
16.恋人よ
17.潮騒


 Vol.3 心の友/空と風と友と
 1.風の詩
 2.うたかた
 3.哀しみよ こんにちは
 4.忘れたくない恋
 5.泣かないで
 6.そしてさよなら
 7.愛の約束
 8.時の流れに〜鳥になれ〜
 9.ハロー、マイ・フレンド
10.ふれあう時を信じて
11.心の歌
12.心の友
13.空
14.KOKORO NO TOMO
15.Wind and Roses
16.メドガーエバーズの子守唄より


 Extra ライブ/春愁
■春愁(1981)
  1.春・のすたるじい
  2.しほり
  3.角砂糖
  4.恋人よ
  5.約束
  6.運命
  7.しあわせは・・・ローソクの灯
  8.夜汽車
  9.合鍵
 10.私の気持も知らないで
■本当のことを言えば(1974)
 11.小さな水たまり
■熱いさよなら(1984)
 12.問わず煙草
■THE SHOW(1975)
 13.アカシアの雨が止む時
 14.6曲メドレー
■冬ざれた街(1973)
 15.煙草のけむり


 ライナーノート/わたしの五輪真弓 



少女

 ♪あたたかい 陽のあたる 真冬の縁側に・・・木枯しが垣根のすきまから・・・♪
        (以下、作品紹介のために、詩の一部を抜粋して表記させていただきます。)
 彼女が育った昭和30〜40年代の風景が懐かしく表現されている。

 レコード会社は商売として沢山売れそうなレコードを企画する。
 発売予定日を決め、納期にあわせてプロジェクトをスタートさせる。
 企画にあった詩を作詞家につくらせ、作曲家を選定し、曲ができると歌手に歌いかたまで指導して完成させる。
 関係するアーチストは専属契約で囲って。
 それが、ビクター・コロムビア・キング・ポリドール・テイチクなど、レコード音楽業界の常識であったが、
 1968年に米CBSとの合弁により新規参入したCBSソニーは、販売戦略のひとつとして当時アメリカで
 人気がでだした「シンガーソングライター」というスタイルを売りとして、「五輪真弓」という素材を発掘した。
 彼女は高校生のときの卒業生を送る会で歌ったのが仲間たちに受けて以来、天賦の才能と持ち前のがんばり、
 負けん気とで音楽の世界にのめりこんでいた。

 1972年、CBSソニーはUMIという彼女だけのレーベルまでつくって、本場アメリカで当時「タペストリー」
 が大ヒット中のキャロルキングを参加させてのファーストアルバム「五輪真弓/少女」を制作した。
 キャロルキングは当時、カーリーサイモン・リンダロンシュタットらと並んで、ウエストコーストサウンドの中核を
 なしていた。

 「五輪真弓」というまぎれもない日本女性が、ピアノという本格的な表現手段も使いながら、一流の外人ミュジシャンを
 従えて、堂々と弾き語りをする姿、そのかっこよさが話題になった。
 戦後の日本では、歌謡ポップスの世界においても、アメリカが憧れ、遥かな目標であった。
 このアルバムによる衝撃的なデビュー以降、彼女はシンガーソングライターという看板を背負って、サウンドを
 追求していく。
 彼女は詩と曲とボーカルとを、足し算ではなく掛け算にすることに夢中だった。

 しかし、この時代の彼女の作品は、時代の先端を走る雰囲気がファンには痛快であったが、日本の音楽界のなかでは、
 まだまだニッチな存在であった。



あなたを追いかけて

 ピアノには、微弱で繊細な音から、ダイナミックな音までの楽器としての表現力がある。
 「五輪真弓」の楽器の王者であるピアノに対する思い入れは強い。

 「荒井由美」は、八王子の老舗の呉服屋さんの娘として、広い洋間の自室にはピアノ、小さい頃から豊かな
 環境に恵まれて、音楽に親しんで育ったときく。
 同じ頃、3歳年上の「五輪真弓」は東京中野のごく普通の家庭で活発な男の子のように育った。
 多分ピアノなんてなかっただろうから、小さい頃からピアノの先生のところに通っていたのだろうか・・・
 もともと才能があったにしても、きわめて短期間のうちにギターとピアノをマスターしている。

 そして、彼女の母上の凛とした姿、これこそが彼女の姿勢、生きざまの根源のようだ。
 余計な情とか思い入れを入れない男の子のつくった散文詩のような歌詞、静寂を生かした音づくり、サウンドと
 一体化した楽器のような自在なるボーカル、聴き取りやすい日本語、その組み合わせが彼女の初期の作品を
 構成している。

 この「あなたを追いかけて」でも、彼女の心臓の鼓動のようなゆったりとしたテンポの弾き語りは、聴くひとに
 安らぎをもたらす。
 そして最後の部分での強い打鍵、長く続く余韻によって、無音の世界との対比を強調し、音楽的な美しさを
 際立たせている。
 「五輪真弓」の音楽を日本語一文字で表すと「凛」である。



恋人よ

 「恋人よ」は、親しいひとが急逝し、そのレクイエムとして1980年に作られた。
 ♪枯葉散る夕暮れは 来る日の寒さをものがたり 雨にこわれたベンチには 愛をささやくうたもない
 恋人よそばにいて こごえる私のそばにいてよ そしてひとこと この別ればなしが 冗談だよと 笑ってほしい♪
 ・・・話しかけようとしてももういない、冗談だよと笑いながら目の前に現れてくれないか・・・若い女性としての
 揺れ動く心、悲しみがいろいろな場面をかりて描き出されている。
 当初は小品としてB面カップリング曲の位置づけだったが、関係者一同が出来上がりに感動してA面に変更したという。
 原型に対して、曲想にあわせた絶妙の編曲を加えている。
 バイオリンを使った静かな、でも大きな物語を予感させるイントロから、次第に音量は増し、シャウトするような
 悲痛なピアノ弾き語りにつながる。

 歌謡曲である。彼女自身も「わたしは昭和中期の歌謡曲で育った」という。
 アメリカンサウンドに惰性を感じだした頃フランスで評価を得て、1年ちかくの間フランスで生活を送ったが、
 帰国して日本人としての自分を再認識し、20代の若き女性としての自分のこころを歌で表現するために、
 ”五輪真弓版歌謡曲”に向かった。
 この曲に先立つ1978年の「さよならだけは言わないで」は、フランスの香り漂う洒落たメロディーに、歌謡曲風の
 歌詞をのせており、ボーカルを前面に押し出した歌謡曲路線への転換点といえる。

 「恋人よ」の詩のなかには「忘却」「無情の夢」なんていう古くて硬い日本語が登場する。
 無情の夢(1936年 佐伯孝夫作詞、佐々木俊一作曲、歌:児玉好雄)は、1960年に「佐川ミツオ」で
 リバイバルヒットした曲。音楽好きの彼女の父上が家で唄っておられたのかもしれない。
 大げさなメロディーと古い日本語の歌詞とのミスマッチが刺激的である。
 この「恋人よ」の思いがけない大ヒットによって、彼女の歌謡曲路線は加速された。
 彼女の制作者としての立場からすれば、ワンノブゼムの曲かもしれないが、「恋人よ」によって彼女は日本、
 アジアでの歌謡界のスターとなった。



風の詩

 彼女の詩には「風」がたびたび登場する。
  「少女」 木枯しが のぞいてる、夢が 風の中で 褪せて 消えてしまったの、木枯しが 通り過ぎる 
  「昨日までの思い出」 風にさらわれて またここに聞こえてくるの 「さよなら・・・・・・さよなら」
  「ちいさな水たまり」 ためいきもらせば風がうごいて水をなでる、「あいつ」とつぶやけば風がふるえて
  水を掠(かす)める
  「酒酔草」 ここちよい夜風が ほほをなでで ささやいた、夜風はほんのり ほろよいでさくら色
  「夜汽車」 さすらいの人を 愛した女 くやみ風、別離はこぶ・・・それはくやみ風
  そして「風の詩」
  風に流れゆくあわい雲を見つけて そのはかない姿に 涙さえもかわいた
  「Wind and Roses」 
  風に吹かれて 春も熟して、風にゆられて 花びらが舞い、風にさらわれて 散っていったバラ

 「風の詩」は、「空」とともに1984年の結婚・出産を経て、あたらしい生活がはじまった時代の象徴的作品である。
 家族との暖かい生活のなかで、それまでの「サウンド」とか、「わたし」とかへのこだわりが薄れて、ゆったりと
 おだやかで、あたたかいものを音楽にしだした。ふっきれて、かっこつけず、時間と空間のひろがりをもって。

 ♪路に咲いている 赤い花を見つけて その可れんな姿に 名前さえ忘れた 遠い遠い昔 あの人と摘んだ
 記憶がそっとよみがえる 雨にゆれていた花びらのうるわしさ それははじめての恋心♪

 彼女の詩には、デビュー当時から、空間や事物に加えて、「とき」が登場する。
 それは、子供の頃への追憶であったり、別れたひとと一緒だった頃だったり、哀しく切なくときに甘い過去、
 「きのうまで」が主題であった。
 その「とき」の扱いが、この頃から変わりだす。「いま」そして「あした」へと。

 そして、「五輪真弓」の音楽は滋愛にみちた「ララバイ」、光ふりそそぐ讃美歌のような世界へと向かう。



Wind and Roses

 こうして、「わたし・あなた」の世界は、「友・仲間」までひろがりをみせ、「とき」は「きのう」から、「いま」
 そして「あした」へとむかっていく。
 詩で表現される世界は彼女自身の人生経験の深まりとともに変化していく。

 このアルバムのしめくくりは、やはり「風」にしよう・・・爽やかな風にゆれて咲く薔薇、「五輪真弓」である。
 美しく、曲がったことを寄せつけない棘をもってひたすらに咲き誇る。
 「五輪真弓」は日本の歌謡史のなかに、鮮やかに咲いた一輪の薔薇として刻まれる。



ミスター・クラウディ・スカイと酒酔草を中心とするメドレー

 1975年、中野サンプラザでのライブで披露された、それまでの彼女のヒット曲6曲をつなげた、めずらしい
 メドレー曲である。
 「昨日までの想い出」「ミスター・クラウディ・スカイ」「冬ざれた街」「酒酔草」「雨」「煙草のけむり」
 このメドレーは彼女ならではの世界、聴くものを引きずり込み楽しい気持ちにさせてくれる。
 アレンジは絶妙、難しい曲間のつながりも、まったく違和感なく安心して楽しめる。

 アマチュアから出発した彼女は、テレビなどよりも、お客を前にした舞台で生き生きする。
 いろんなひとの受けを考えてあたりさわりなくなりがちなスタジオ録音に比べて、ライブでは基本コンセプトに
 加えて、当日の観客の雰囲気と彼女の感情とが「うた」に反映されて、個性豊かなものに仕上がる。
 この私家版アルバム「Extra ライブ/春愁」でも、その一端をうかがうことができる。
 ライブでの「問わず煙草」の歌いぶりは、たちあがりから歌いすすむにつれて、アンニュイなものになってゆく。
 「小さな水たまり」では、あの「ちあきなおみ」の歌いぶりすら彷彿とさせる。こんな歌い方もできる。
 「アカシアの雨が止む時」〜「西田佐知子」版の表記は「アカシアの雨がやむとき」〜 まで歌ってくれているが、
 文句なしにうまい。まさに歌謡曲である。



あとがき

 うたはいつの時代も、ひとによりそう。
 出逢いと恋と愛と別れ、きくひとの心を癒し、力づけてくれる。
 音楽療法という分野がある。悲しいときに悲しい曲からききはじめ、最後にうんと元気な曲にたどりつくように
 聴いていると不思議と元気がでてくる。
 音楽を聴く。スピーカーの前に座って、ジャケットを眺めながら。
 まるで歌手が目の前で歌っているような、まるでオーケストラが目の前で演奏しているような感動。
 そうしたスタイルは古いものになってしまった。

 1983年のアルバム「窓ーせめて愛をー」に「ファンの皆様へ」と題する、こんなリーフレットが挟まれていた。
 (そのまま引用させていただきます。)
 ”新しいアルバムをお届けしました。気にいっていただけましたか? 一枚のレコードがリリースされるまでには、
 息のあったミュージシャン、アレンジャー、レコード会社他数えきれないほどのスタッフの方々が関わっています。
 それらの人々の才能には、当然に正当な報酬が支払わなければならないと思います。
 ところが最近では、貸しレコードなとという安易な複製が横行し、レコード売上にも、大きく影響され、このままでは
 音楽にたずさわっている方々が危機を迎えるだけではなく、新譜の制作が制限されたり、レコード価格の引き上げを
 招く事にもなると思います。
 レコードはプライベートな楽しみだけに使ってください。音楽を愛するすべての人々にお願いします。五輪真弓”

 そのレコードもその後CDに移行し、更にネット上でのダウンロード販売が主流へと変化した。
 音楽は贅沢品ともいえる高価なレコードを購入してスピーカーの前で聴くスタイルから、いつでもどこでも
 ヘッドホンで聴く、そして飽きればすぐに別の曲へ移る消耗品となった。
 このように音楽の内容も聴くスタイルも時代とともに変化しているが、音楽を愛するひとは確実に増加している。

 父も母もそうだったように、わたしも若い頃に夢中だった「うた」、懐メロが好きになった。
 「五輪真弓」「荒井由美」「中島みゆき」の女性シンガソングライタートリオが頑張り続けているのは嬉しい。
 わけても「五輪真弓」、自分たちと同じ時代を、時代に媚びずに自己主張を貫き通して、音楽の世界で生きてきた。
 わたしは、「五輪真弓」に深い共感を覚える。

 「五輪真弓」の作品は、繰り返し聴くほどに味わいが深まる。30年以上も前の曲であっても新鮮さを感じる。
 世間で沢山売れたヒット曲ではなくても、彼女のそれぞれの曲は聴くもののこころに感動を与えてくれる。
 バッハやモーツアルトのように、完全なるものはひたすらに美しい。ときを超える。
 「五輪真弓」の音楽はスタンダードナンバー・・・いや、クラシックである。

                             *  *  *

 このアルバムは「五輪真弓」の音楽の変遷にあわせて3枚構成とし、Extraとしてライブ盤の抜粋を追加しました。
 Vol.1 少女/シンガーソングライター・・・「サウンド」を追求していた時代
 Vol.2 恋人よ/うしろかげ・・・「わたし」のこころを訴える「歌謡曲」の時代
 Vol.3 心の友/空と風と友と・・・あたたかくやさしく、「ララバイ」の時代
 Extra ライブ/春愁・・・アルバム「春愁」(CD未収録)と、ライブの雰囲気が漂う5曲


                                             2012年4月 こもれび倶楽部





 五輪真弓 My Selection (S氏私家版アルバム)



  親しい友人である音楽評論家の佐藤康則氏が企画された五輪真弓の私家版アルバムです。
  私が制作を担当し、2012年10月に完成しました。
 

 #1 少女 
 1.なわとび
 2.少女
 3.雨
 4.空を見上げる夜は
 5.あなたを追いかけて(PartU)
 6.黒猫とゆりかご
 7.昨日までの思い出
 8.水に沈みゆく影
 9.煙草のけむり
10.赤毛の犬
11.夏のおもかげ
12.ミスター・クラウディ・スカイ
13.青色の雨
14.冬ざれた街
15.ダンシング・ボーイ
16.時をみつめて
17.小さな水たまり
18.酒酔草

 #2 ジャングルジム 
 1.なんて素敵な日
 2.リンゴの樹の下で
 3.十九歳のとき
 4.ジャングルジム
 5.うつろな愛
 6.ハッピーバースディ
 7.夕ばえ坂
 8.青い月の下で
 9.青色の雨
10.十九歳のとき
11.私 少し疲れたの
12.海
13.少女(仏語)
14.なわとび(仏語)
15.角砂糖
16.碧空
17.ゲーム
18.巴里の旅情


 #3 恋人よ
 1.さよならだけは言わないで
 2.残り火
 3.恋愛ともだち
 4.夜汽車
 5.一葉舟
 6.合鍵
 7.春・のすたるじい
 8.永遠の海
 9.雨の中の二人
10.約束
11.岐路(みち)
12.恋人よ
13.ジョーカー
14.わたしの気持も知らないで
15.ジェラシー
16.想い出はいつの日も
17.春便り
18.愛の蜃気楼(砂の城)

 #4 潮騒
 1.マリオネット
 2.リバイバル
 3.忘れたいの
 4.鴎(かもめ)
 5.あなたのいない夜
 6.さよならの街角
 7.手紙
 8.問わず煙草
 9.行きずり
10.ジグソーパズル
11.潮騒
12.心の友
13.素直になれなくて
14.野性の涙
15.落陽
16.抱きしめて(愛は夢のように)
17.想い出を捨てて
18.FALL IN LOVE


#5 時の流れに
 1.恋はタブー
 2.雨宿り
 3.他人がえり
 4.時計
 5.窓
 6.カリフォルニア
 7.海と風と砂と
 8.夜行列車
 9.ラブ
10.せめて愛を
11.空
12.ジュ・テーム
13.密会
14.夜更け道
15.ダンスは二人で
16.風の詩(うた)
17.家路
18.時の流れに〜鳥になれ〜

#6 Wind & Roses
 1.時雨
 2.泣かないで
 3.春ごころ
 4.恋の遊戯
 5.遠い汽笛
 6.雨色のハイヒール
 7.明日から
 8.マスカレード・ショー
 9.Wind & Roses
10.恋・・・ふたたび
11.そしてさよなら
12.幻想
13.ミッドナイトレーサー
14.恋しさは今
15.ノスタルジー
16.恋しても
17.川は海へ
18.ハロー・マイ・フレンド

#7 Live Recording
 1.あなたを追いかけて(PartU)
 2.メドガー・エバーズの子守唄
 3.少女
 4.本当のことを言えば
 5.ちいさな水たまり
 6.ダンシング・ボーイ
 7.水に沈みゆく影
 8.酒酔草
 9.アカシアの雨が止む時
10.しほり
11.角砂糖
12.恋人よ
13.運命(さだめ)
14.合鍵
15.私の気持も知らないで
16.素直になれなくて
17.時をみつめて

#8 シングル盤コレクション
 1.落日のテーマ
 2.春風
 3.清い流れのように
 4.運命(さだめ)
 5.春に咲く花
 6.真夜中のラブソング
 7.ラブリーディ
 8.空
 9.時の流れに(※)
10.熱いさよなら
11.抱きしめて
12.そしてさよなら(※)
13.おまえ
14.忘れたくない恋
15.愛の約束
16.心の歌
17.時は過ぎて
18.春・のすたるじい(#)

      (※)シングル盤バージョン
      (#)シングルCDバージョン

 ライナーノート/五輪真弓・・・異能の歌手 



 五輪真弓という音楽家の特徴を一言で言い表すとすれば、「多様性」という言葉になるだろう。
日本歌謡史を飾る名曲『恋人よ』で日本レコード大賞金賞を受賞した人気歌手と、多感な少女時代の心象風景を鮮やかに描写した『少女』を作曲したシンガーソングライターが同一人物だとは、にわかには信じ難い事実だ。
長い髪を風になびかせジーンズのロングスカートをはいた『少女』の頃の彼女と、三宅一成デザインのファッションに身を包み華やかなヘアメイクを施した『恋人よ』以降の彼女とは、とても同じ人物とは思えない。
しかもこうした変化は誰かに強要されたわけではない。彼女自身の内的な要求に従って、彼女自身が選択した道なのだ。
彼女はデビュー以前のアマチュア時代を除けば、ほとんどすべての曲を、誰のためでもなく自分自身のために作詞・作曲し、かつ歌ってきた。従ってこうした変化は、彼女自身の中から必然的に出てきたものに違いないのだ。


 暖かい縁側の心地よい温もりの中で、いつか垣根の向こうの広い世界に出て行くことを夢見ていた多感な少女は、やがて自分の中に眠っている音楽の才能に気づき、自分が感じ、自分が触れるものすべてを音楽を通して表現する喜びに目覚めていく。溜めていた水が一気に流れ出すように、彼女が見、聞き、感じたことのすべてが、詩となりメロディーとなって彼女の唇から流れ出る。
人と交わることが苦手なこの才能に溢れた少女は、音楽を通して(それは彼女にとって自分自身を理解してもらう最も確かな手段だった)人と触れ合い、一人の女性として、一人の人間として成長を遂げていく。自分を取り巻く世界との孤独な対話を通して感じたことを語ることから出発した彼女は、多くのミュージシャンと共演し、生身の人間との対話を通して自分を表現する喜びを知るようになっていく。それは必然の流れだっただろう。

 だがその喜びは長くは続かなかった。他者との対話を通して自分を表現するということは、他人の考えと自分の考えをどこかで妥協させなければならないということなのだ。
それはあるがままの自分を完全には表現することができないと言うことを意味している。他人に理解してもらうためには、他人が理解できるような形で表現する必要があるのだ。


彼女にとって大きな決断の時がきた。そして彼女は、他人に理解されることより自分が表現したいものに忠実であろうと決心する。五輪真弓という人間は、そうすることでしか生きていけないと覚悟したのだ。

彼女はフォーク、ジャズと言った既存のスタイルを借りて表現していたそれまでの自分の音楽に別れを告げ、一人フランスへと旅立つ。
フランスでの半年に亘る一人暮らしの中で、彼女はこれからの自分が拠って立つべき原点を見出した。それは、自分が日本人以外の何者でもないということだ。彼女は改めて自分をありのままに表現できるのは、日本語という母国語以外にはあり得ないということを悟った。
そしてまた、自分自身の音楽のルーツにあるものはフォークやジャズではなく、慣れ親しんだ日本の歌謡曲だということを実感したのだ。シンガーソングライターとしてのあるべき姿などという窮屈な足かせを外し、自分が感じ思ったことを慣れ親しんだ言葉で表現し、心の内から湧き上がってくる自分自身の歌を歌おうと決心したのだ。

 1978年、何の前触れも無く『さよならだけは言わないで』がシングル盤として登場する。
軽快なイントロに乗って歌いだされるその歌詞もメロディーも、それまでの彼女の歌に馴れ親しんだ者にとってはまさに青天の霹靂であった。この日を境に、もう一人の五輪真弓が誕生した。彼女はついに暖かい縁側から広い世界へと羽ばたいたのだ。まるで憑き物が落ちたかのように、それまで狭い場所に閉じ込められていた言葉とメロディーが、奔流となって彼女からほとばしり出た。
稀に見る音楽的才能を持ち、日本のシンガーソングライターの草分けとしてミュージックシーンの先頭を切っていた一人の歌手が、歌謡曲(彼女自身は自分の歌が既存のどのジャンルに入るかなどということは意識していなかっただろうが)のヒット曲を矢継ぎ早に出し始めたのだ。これまで作り上げてきた自分のイメージを大切にするありきたりの歌手であれば、こんな冒険は決してしなかったに違いない。また作詞家が書いた歌詞に作曲家がメロディーを付け、それを歌手として単に歌うだけであったなら、こんなことはしたくてもできなかっただろう。類い稀なメロディーメーカーであり、同時に言葉に対する鋭敏な感覚を兼ね備えた彼女だからこそ成し得たことであった。

 その先に『恋人よ』が生まれるのは、もう時間の問題であった。 
                                            121003 Y.S

 


Music/五輪真弓